ひょんなことから、恩師である
大学のゼミの先生の講義を卒業後に受けることができました。
そのひょんなこと、とは
3月11日に東日本を襲った震災です。
私の所属していたゼミは、ともかく何でもありで
補完代医療、東洋医学、ホメオパシー、オステオパシー、助産院、死ぬとは何か、PTSD。。本当に幅広いジャンルの研究を
ゼミ生の興味に基づいた見地から学ぶ事ができました。
患者の「声」を聞くという手法を使った研究調査が、ゼミを希望するきっかけだったと記憶しています。
私は患者の「声」を聞くという研究調査をする時間はとてもなかったので
卒論はもう本当にひどいものだったのですが
「現在公表されていて信じられているデータを“疑うきっかけ”となる」
ものへは、大きな興味を持って授業に取り組んだ気がします。
(それは高校時代の恩師・今井和愛先生の影響によるところが非常に大きいのですが)
そんなゼミの先生からの、卒業後の特別講義。
それは、「放射線物質の飛散量に関する各種データの読み方」でした。
私自身、安全基準値とかその類で呼ばれるものに関しては
調査不足なところがありますが
先生からゼミ生(OB/OG含む)に送られてきたメールは
そのまま転載しても問題ない内容だと思いますし
また同時に、私がこの事象を読み解くよりもまず先に
この内容をブログの記事として掲載したいと強く思ったので
以下、私の敬愛する辻内琢也先生のメールをそのまま転載します。
先生のお人柄を知ることができる文面だと思うので
ほぼ手は加えてません。(メールが長文のため後編につづきます)
注:今回の転載にあたって先生の許可はいただいていますが
以下のメールはあくまで現段階のものであり
先生のご意見/研究方針や信条をすべて反映したものではありません。
(以下、メールより転載)ーーーーーーーーーーーーーー
日付:2011年3月24日1:50
件名:放射能汚染に関する信頼できるデータ@辻内
震災後、放射能関係の情報や文献を、専門ではありませんが、少しだけ勉強してきました。
福島第一原発に電源が通るなど、なんとかこの先の光明が見えてきたようにも感じますが、
持続的に放射性物質が漏れている状況が終結しない限り、長期的な視点で見ていかなければいけません。
以前、私も内科医として勤務していた頃に、胃や心臓血管などの透視撮影やCT検査などを行っている際、
鉛で出来た放射能防御エプロンなどを着けたり、放射能にはとても気を遣っていました。
放射能は人体に確実に影響を及ぼすのは事実です。
・・・とここまで昨日書いていたところで、本日(注:3/24現在)
東京都の水道水は乳児の摂取制限が政府から報告されました。
いよいよ、長期的にこの問題を考えなければいけない事態になってきました。
以下、信頼できるデータを見つけましたので、皆さんアクセスして、その日の放射能の状態を確認してください。
毎日、毎時間更新されるデータですし、また、最小値と最大値、そして平均値を載せているところが、
科学的に信頼できるだろうという理由です。
東京都健康安全研究センター ホームページ
http://www.tokyo-eiken.go.jp/index-j.htm
このホームページの中の、
「都内の環境放射線測定結果」というページです。
http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/index.html
◆都内の環境放射線量調査
1日単位の測定結果
(Environmental Radiation Measurement Result in Tokyo)
グレイは放射線が物質に当たった時のエネルギー量を表し、大気中の放射線量1グレイは1シーベルトに換算できます
東京電力福島第一原子力発電所の事故以前の測定値は、1時間あたり0.028~0.079マイクロシーベルトで推移しています。
http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/past_data.html より
このデータは、原発事故の発生する前の2週間のデータが載っている点が、評価できるポイントです。
比較する平常値のデータがあるということです。
新聞にも17日より掲載されるようになりましたが、
いったいそれが最高値なのか平均値なのか、明示されていませんでした。
線量率(dose rate)
μGy/h
(マイクログレイ/時間)(microgray per hour)
測定日(Measurement date)
最大値(max)
最小値(min)
平均値(average)
2011/03/08
0.0388
0.0312
0.0343
2011/03/11
0.0376
0.0308
0.0341
2011/03/14
0.0377
0.0304
0.0341
2011/03/15
0.809
0.0318
0.109
2011/03/17
0.0562
0.0460
0.0511
2011/03/18
0.0530
0.0443
0.0484
2011/03/21
0.147
0.0470
0.0969
2011/03/22
0.166
0.123
0.137
それまで0.03マイクロシーベルト程度だったのが、爆発が続いた15日16日に最高値0.8マイクロシーベルトに上がっており、
一端放水作業がうまくいっていた17日~20日までは、0.05マイクロで低め安定して、
再び21日から0.15マイクロと、平常値の5倍程度に上がった状態が続いているのが見て取れます。
この再上昇には、諸説ありますが、黒い煙が上がったり、一時的に放射性物質が再び放出されたことと、
雨が続いたという点の2つが大きな理由だと考えられます。
◆ 都内の降下物(塵や雨)の放射能調査結果
Radioactive material level of fallout at Tokyo
大気中に拡散している放射性物質が雨と一緒に地上に落下したためとみられる値の
上昇が観測されましたが、健康への影響はありません。
★情報を読むのは、普段ゼミで文献を読むのと全く同じです。
その情報の発信源・発信者が、どのような思想の持ち主で、どのような立場にある者なのか
という点が大切です。
同じ、研究者でも、政府の御用学者なのか、政府批判学者なのか、によっても違ってきます。
今回の震災に関する情報の渦から、自分が信頼してもよいと思える情報を汲み取っていかなければいけません。
(ここまでメールより抜粋)ーーーーーーーーーーーーーー
ここまで長文で私が言いたいことは、
「採取されたデータは変えることができないが、データを元に何を言うかは自由だ」ということです。
ある人は上記の数値を見て「普通じゃない!異常!どうなっちゃうの!!」
という意見を持つことでしょう。またある人は
「確かに通常より高い値を出しているが、直ちに健康被害を及ぼすものではない」
と言うでしょう。またある人は
「(数値が跳ね上がっていることはわかりつつ)ぜんぜん、タバコのほうが健康被害という観点ではやばいでしょ」
と言うかもしれません。
どれも正解です。でも立場が違うし
3番目にいたっては完全に論旨のすり替えです。
今比較すべきは「放射能がヒトに及ぼす影響力」であって、
「タバコと放射能どっちがやばいか」という話ではないのですから。
この現象は日常的に見られます。
2〜3人の意見を聞いて
「”みんな”こう言っているから、結論(=正論)はこうだ」
と解釈してしまうことです。
統計学上、2〜3人の意見が同じ方向に向かっていたからといって
その方向が”みんな”そうだという解釈にはなりません。
でも実社会ではそういう、ものの見せ方はたくさんあります。
広報誌、ニュースレターが出す数値やアンケート結果だってそうです。
統計学上の優位差が無いものを、あたかも「世間は皆こういう傾向らしい」として見せているのです。
ここに介在するものはすべて「ひとの意思」です。
データを図ったひと、記録したひと、データとしてまとめたひと、報告したひと、
報告をもとにレポートを書いたひと、そのレポートを添削したひと、添削したレポートを修正したひと、
そのレポートを発表したひと
彼らの「意思」がそれぞれ介入し
厳然たる事実のデータは、ある方向に向かって歩き出します。
それは、集団の意見を取りまとめるという面では
とても良いことであり、しかしある面では思考の方向を統一することになりかねないのです。
ここまで我慢して読んでくれた方へ。
私も毎日、各種のデータや意見を、ネットやテレビ、口伝えに聞いています。
正直「何を信じていいかわからない」状態です。
混乱しかかっています。
そんな時、先生のメールを読み返します。
この世の中にある発表データというものは
「ひとの意思」が介入して作られているということを
自分の中で受け入れるのです。
そうすることで、たとえば枝野氏が前と違うことを言ってたとか
テレビの解説者が違うこと言ってたとか
そういうことでやきもきしなくなります。
「そういうこともある。だってデータの読み方はひとそれぞれだから」と。
ここでいったん、気持ちをニュートラルにしたところで、
改めて、「単なるデータ」を読みます。
目をつむり、深呼吸します。
たしかに数値は上昇している。でもまだ大丈夫。
この水は、オトナは飲んでもいい。買い占めなくてもいい。
今数値は減少傾向にある。(たとえニュースで復旧作業が難航していたとしても)
であるならば、今はこの水を貯めておこう。
この水を飲めない子供に、ミネラルウォーターを渡そう。
ペットボトルに手が伸びる自分と対話します。
後半は、先生の講義2「データの読み方」を
ほぼ全文掲載します。
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